WordPressでWebサイトを制作している皆さん、納品前のサイト移行、どうしていますか?
ローカル環境やテストサーバーで作り込んだサイトを、いよいよ本番サーバーへ。そんなとき、多くの制作者が頼りにしてきたのが、直感的な操作でサイトを丸ごと移行できる定番プラグイン「All-in-One WP Migration」ではないでしょうか?
しかし、そのおなじみの手順が、今後は使えなくなるかもしれません。
実はこのプラグインに重大な利用規約の変更があり、僕たちWeb制作者がクライアントのサイトを移行するために利用すると、明確な契約違反になってしまうのです。
この記事では、規約変更の「何が、なぜ問題なのか」という核心部分をわかりやすく解説します。さらに、知らずに使い続けてしまうことの重大なリスクと、今すぐ乗り換えられる安全な代替プラグインも具体的にご紹介。
事業とクライアントからの信頼を守るため、ぜひ最後までお読みください。
【結論】All-in-One WP Migrationで何が起きたのか?
さっそく結論からお伝えします。
2025年6月17日から施行される新しい利用規約により、僕たちWeb制作者がクライアントワーク(第三者のサイト制作・移行)でAll-in-One WP Migration(特に有料拡張機能)を使うことは明確な契約違反となります。
「え、どうして?」と思いますよね。規約の重要なポイントは、大きくわけて2つです。
ポイント1:「自分が所有・運営するサイトのみ」に限定
新しい規約にはこう書かれています。
お客様は、ソフトウェアがお客様またはお客様の組織が直接所有および運営する Web サイトにのみ使用されることを表明します。

要するに「このプラグインは、あなたが直接所有・管理している自分のサイトにだけ使ってくださいね」ということです
僕たち制作者にとって、クライアントのサイトは「直接所有」しているものではありません。この時点で、クライアントワークでの利用は規約の対象外となってしまいます。
ポイント2:「デジタルエージェンシー(制作会社)」は名指しで禁止
さらに決定的とも言えるのが、以下の条文です。
デジタルエージェンシー(Web制作会社)は、エンタープライズ契約なしに、顧客の移行サービスを提供してはならない。
これは僕たちWeb制作会社やフリーランスを名指しして「クライアントのサイト移行で使いたいなら、高額なエンタープライズ契約を結んでください」と宣言していることに他なりません。
つまり、これまでのように数千円の拡張機能を購入してクライアントサイトを移行する、という使い方は完全に禁止されたのです。
知らないと怖い……規約違反の3大リスク
「規約が変わったのはわかったけど、バレなければ大丈夫じゃない?」
そう思うのは非常に危険です。規約違反が発覚した場合、事業の根幹を揺るがしかねない具体的なリスクが待っています。
1. ライセンス無効化のリスク
規約には、違反が発覚した場合にライセンスキーを無効化できると明記されています。これは、購入した有料機能がある日突然使えなくなることを意味します。
納品直前の大事なタイミングで移行作業がストップしてしまう、といった悪夢のような事態も起こり得ます。
2. アップデート停止のリスク
ライセンスが無効になれば、当然プラグインのアップデートも受けられなくなります。WordPress本体やPHPがバージョンアップした際にサイトが真っ白になったり、セキュリティ上の欠陥(脆弱性)が放置され、サイト改ざんなどの攻撃対象になったりするリスクが飛躍的に高まります。
3. 損害賠償のリスク
最も深刻なのが法的なリスクです。規約には「不正使用に基づく損害賠償を含む、法的救済を追求する」と書かれています。万が一、開発元から損害賠償を請求されるような事態になれば、金銭的なダメージはもちろん、クライアントからの信用も完全に失墜してしまいます。
無料版ならクライアントワークに使えるの?
ここまで読んで、鋭い方ならこう思ったかもしれません。
「規約で例に出ているのは有料拡張機能ばかり。無料版なら今まで通りクライアントワークに使えるんじゃないの?」
非常に重要なポイントですが、結論から申し上げるとその考えは非常に危険です。無料版であっても、クライアントワークでの利用は規約違反と見なされる可能性が極めて高いと言えます。
理由1:規約の対象が「有料版」に限定されていない
規約の中で利用を禁じている対象は「本サービスを通じてアクセスしたGPLv2ライセンスのソフトウェア」と書かれています。ここには「有料版」という言葉はなく、提供元(ServMask)が配布するソフトウェア全般と解釈するのが自然です。
WordPress公式ディレクトリにある無料版も、提供元はServMask社です。つまり、無料版の利用もこの規約の範囲内と考えるのが妥当です。
理由2:規約変更の「目的」を考える
そもそも、なぜ今回このような規約変更が行われたのでしょうか?
それは僕たちのようなWeb制作者による「商用利用」を制限し、高額なエンタープライズ契約へ誘導することが目的だと考えられます。
開発元の視点に立てば「無料版ならクライアントワークOK」という抜け道を残すとは考えにくいでしょう。
グレーゾーンは「黒」と判断するのがプロの鉄則
規約の解釈に少しでも曖昧さが残る場合、僕たちプロが取るべき態度は「最も安全な道を選ぶ」ことです。
クライアントのサイトと自社の事業をリスクに晒してまで、無料版を使い続けるメリットはもはや存在しません。この疑問に対する答えは、残念ながら「No」です。

無料版・有料版を問わず、代替プラグインへの移行を決断しましょう。
【解決策】今すぐ乗り換えたい!安全な代替プラグイン3選
ここまで読んで、不安になった方も多いかもしれません。
でも、ご安心ください。All-in-One WP Migrationの代わりになる、クライアントワークでも安心して使える優れたプラグインは存在します。
ここでは、特におすすめの3つを厳選してご紹介します。
プラグイン名 | おすすめ度 | 特徴 | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|
UpdraftPlus | 世界で最も利用されているバックアッププラグイン。そのバックアップ・復元機能を使ってサイトを移行でき、信頼性が非常に高い | バックアップもサイト移行も一つの高信頼プラグインで完結させたい方 | |
WPvivid Backup Plugin | 無料版でもバックアップ、リストア、サイト移行の基本機能が充実。操作も直感的でわかりやすく、All-in-One WP Migrationの操作感に近い | とにかく無料で高機能なツールがいい!操作性を重視し、スムーズに乗り換えたい方 |
まとめ:僕たちWeb制作者が今すぐやるべきこと
最後に、今回の重要な変更点をもう一度振り返ります。
- All-in-One WP Migrationは規約変更で、クライアントワークでの利用が契約違反に。
- 使い続けると、ライセンス無効化や損害賠償請求など、事業継続に関わる重大なリスクがある。
- 安全で高機能な代替プラグイン(WPvivid, UpdraftPlusなど)が存在する。
では僕たちは具体的に何をすればいいのでしょうか?
答えはシンプルです。「今すぐAll-in-One WP Migrationの利用を停止し、代替プラグインへの移行を検討・検証する」ことです。
まずは今回紹介したプラグインを、ご自身のテストサイトなどで実際に使ってみてください。そして、ご自身の開発フローに最もフィットするものを見つけ、今後の標準ツールとして採用することを強く推奨します。
ツールの利用規約は、僕たちの仕事と信用を守るための大切なルールです。これを機に、普段使っている他のツールについても、ライセンスを一度確認してみる良い機会かもしれません。
この記事が、日本のすべてのWordPress制作者の皆さんの助けになれば幸いです。ぜひ、お仲間の制作者にもこの情報をシェアしてあげてください。